作品説明 |
1926年に竣工し、80年にわたって地域に親しまれてきた京都の旧立誠小学校の跡地を地域の資産として60年先の未来に繋ぐプロジェクトである。旧立誠小学校は京都で現存する最古のRC造の校舎で、ヨーロッパの様式に則った立面構成が特徴になっており、京都市の歴史的風致形成建造物に指定されている。また、日本の学校制度が整備される前に当時の町衆が資金を工面して設立した番組小学校で、自治会の寄り合いに使われるなど地域のコミュニティ拠点としての役割を担ってきた。 跡地活用にあたって、かつて校庭があった場所を高瀬川に開いたまちの広場とし、観光客や宿泊客が地域の活動に触れる機会をつくることで、新たな賑わいが創出されることを期待した。地域の歴史的な遺産である旧校舎は、高瀬川側からの景観を大きく変えないよう配慮し、増築棟を河原町側に配置することで、旧校舎の解体範囲を最小限にしている。また増築棟の外装は旧校舎の凹凸のリズム感を踏襲することで、旧校舎の面影を施設全体で再構築し、旧来から親しまれてきた地域のシンボルとして再生していくことを意図した。ホテルは、レセプション、バー、レストランおよび、客室から高瀬川と鴨川越しに東山を一望することができる。また旧校舎の教室を客室に、自彊室をRETREAT ROOMとして再利用するなど旧小学校の歴史を感じる空間を共存させた。 京都の自然環境に調和した旧小学校跡地の再生と、地域との親密な関係性、愛着やコミュニティといった無形の価値を未来に継承することで、この建築が街から親しまれ、世界中に日本文化を発信することを期待した。 |