作品説明 |
現代に甦る京町家 「伝統と現代テクノロジーが交叉するラグジュアリーな空間」 敷地は、間口が狭く奥行きが長い、歴史的で最も重要な京都の特徴である鰻の寝床である。 建物全体は、外部ヴォイド空間と内部ヴォイド空間との位相幾何学的な対称性をもち、線形的に延長される連続空間に垂直ヴォイドを絡める構成となっている。 建物は、道路に面するのではなく、一旦前庭を介して位置する。京町家独特の通り庭は奥行きのある長い通路空間として再構築される。玄関から連続する長い廊下の壁や天井には、格子がはめられており、連続する格子の通路空間となっている。客人は、最新のテクノロジーによる光と音楽で演出された格子空間によって、出迎えられ、内部へと導かれる。 1、2階では、前庭へと水平に拡がりのある空間(コンシェルジュルーム)と垂直に拡がりのある吹抜空間(ロビー・ライブラリー)とが線形に伸びる格子空間に交わる。客人は、椿と矢竹の植栽と那智黒を敷き詰めた庭に面したコンシェルジュルームに通されチェックインを行う。その後、格子空間を経て、ロビー・ライブラリーに向かう、ここでは日本の四季の映像が流れている。 京町家には、伝統的な坪庭が配されていた。奥行きの長い敷地に自然を導き入れる坪庭は、京都人の知恵であり、こうした知恵を現代に甦らせる。 伝統的な坪庭は水平であるが、ここでは垂直面に緑の植栽を施した立体的な坪庭となっている。光と風は、空に向かって開放された坪庭から各部屋に導かれ、緑の植栽は、どの部屋からも眺めることができる。この立体的な坪庭に面する6、7、8階の部屋が、いわばこのホテルの座敷ともいうべき最高級の部屋となっている。これらの部屋は、壁、床、天井の素材がそれぞれ異なっており、違った雰囲気を味わうことができる。 この立体的な坪庭の底部には岩が敷き詰められており、岩の間から霧を発生させ、日本の気象を凝縮した小世界をつくっている。霧は夏と冬とでは、その姿を変え、夜間には霧の中を幾つもの光の筋が浮かび上がる。 こうした周到に散りばめられた幾つもの仕掛けによって、客人は京都の文化を知り、過去と未来の日本の文化を理解することができるだろう。 われわれの願いは、真の日本の理解が得られることである。 |