ごあいさつ
今日、社会活動のグローバル化や地球的規模の環境・エネルギー問題の顕在化、情報通信技術の急速な進展の中で、あらゆる産業分野において、様々な変化に対する迅速・的確な対応が求められています。
特に、価値観やライフスタイルの多様化により、真に豊かさを実感できる製品・サービスの開発、提供が重要になってきております。
一方、日本を代表する豊かな文化と洗練された感性に磨かれた伝統産業や高度な先端技術を基盤とする近代産業が共存する京都は、新たな価値創造の重要な手段であるデザインの豊富な蓄積と、それを生み出す多くの資源を育んでまいりました。
京都府では、このような環境を最大限に活かし、21世紀に向けた京都産業の振興の柱の一つとして「先端技術と生活文化を結び付ける産業デザイン発展基盤の形成」を位置づけ、各種のデザイン振興施策を推進しています。
この「Made in KYOTO 京都デザイン優品選定事業」は、京都ブランド商品の普及啓発と企業のデザイン開発意欲の喚起を図るため、平成元年度から実施しております。
今回は、280点を越える応募をいただいた中で、厳正な審査を経て、選定いたしました商品は、いずれも「京都発」として世界に向けて発信することのできる優れたデザイン商品ばかりです。
どうか、これらの「京都デザイン優品」を、数多くの方々がご愛顧いただき、そのすばらしさを実感していただきますよう、心から願っております。
本郷 大田子
(社)京都デザイン協会 理事長
1996 Made in KYOTO 京都デザイン優品選定にあたって
1872年、維新間もない明治5年、京都は3人の伝習生をフランスのリヨンに派遣した。フランスの自動紋織機ジャガードの技術伝習と機械を購入するために。100年以上前のことだと考えると、距離といい、費用といいそれ相当の決断であったにちがいない。
しかし、これをして西陣を日本一の世界を代表する織物の産地としたのだから、京都の進取の気風魂を強く感ずる。このことを角度を変えてみて見ると、新しい技術や新しい感性、新しい考え方といったものを即座にたやすく受け入れてしまう高度な素地が京都にあったことを意味している。実際、ジャガードという高性能マシーンを導入したからといって、どこででも簡単に新製品が次々に開発され、新産業が生まれるものでもない。西陣という地に蓄積されたノウハウ、優れた知性、高度な技が、この機械を簡単に使いこなす素となったに違いないと思えるのである。
京都の産品の特質が、こうした知的蓄積と、高度な技を身近に見知る環境の中で生まれてきたものだとすれば、新時代への対応も案外無意識の中で確実におこなわれているのかもしれない優秀なデザインの発見と創造というこの「Made in KYOTO 京都デザイン優品」の選定は、いわばそうした京都の心意気が姿形になったものを世に送り出す役目にもなっている。今回は、総数289点のうち85点の選定という厳しいものになったが、惜しくも選定を逃した産品の中にも時代が求めるものに羽化する兆しはいっぱいあった。
いままでも、そして今回の選定商品も、世界を市場に活躍できる物から限られた世界にのみ勇躍活躍するものものまでの幅と奥行の広さが、京都産業らしいし、その底に流れる心意気がデザインの魅力となって新しい価値を生み出す源となりはしないかと期待に胸膨らむのである。