審査講評
山内陸平
京都工芸繊維大学名誉教授
今までの社会の価値は大きく変化している時代であり、京都のグッドデザインである
優品とその認定事業こそが、時代を作っていくスケールを持っていると考える。作り
手の顔がみえるサイズの構造がこの京都にはめんめんと有ることは誇りに思って良い
。(社)京都デザイン協会がアフターケアを続け産業としてのものづくりに参加する
ことを望む。
向井吾一
京都意匠文化研究機構代表
出品者にはそれぞれに培ってきたこの地域の風土があり、個別
の技術、材料、加工な どどれも一生懸命作っているのがわかる。認定されなかった商品の中にも,デザイン
の視点を変えればなるほどと言える可能性があるものが多い。これらを踏まえ協会の
デザイン的なフォローは大事なことである。
河崎隆雄
インテリアデザイナー
今回初めて京都デザイン優品認定の選定審査員に命ぜられて、私は不安と戸惑いがありました。その理由は応募商品が広範囲に及んでいることで、判断基準を何処に置いて選考すれば良いのかと云う点です。私自身が審査されている思いでした。応募商品はそれぞれの関連業界に於いて、それなりに評価と手応えを得ている商品だと思います。私なりには各商品に対して良い所やもう少し改良・整理が必要だと思われる商品が多く在りました。専門業界向けの機器に関して、機能・能力・作業性等、基本的要素を十分に理解した上での判断評価ではなく、工業デザイン上のグラフィック処理/
カラーリング/フォルムから判断させていただきました。出来得れば候補商品に対し、商品づくりの背景や市場認識などの部分を直接面
談や質疑が可能であれば更に選定の質が高いものになると感じました。
今、京都を拠点としたインテリアデザインや家具/生活デザインの分野が注目されています。京都の土壌が育んできた慣性を透して、新しい物づくりがインターナショナルレベルで受け入れられ、好感度な評価を得ています。それらを生み出す京都のデザイン意識とデザイン力(レベル)に更なる期待をして居ます。
石橋勝利
(株)アクシス 情報企画グループ編集長
今回初めて、京都デザイン優品の審査に参加させていただき、その製品分野の多様さにとても驚かされました。伝統工芸品から土産物、精密機械などすべてが京都のモノづくりと経済を支えているのだと感じました。同時に審査における私自身の評価基準をどこにおくべきか大変迷ったというのが、正直なところです。そこで自分自身に言い聞かせたのが「その製品(商品)がユーザーにとってどんな意味があるのか(本当に意味があるのか、つくり手のエゴになっていないか)、ユーザーが見える製品・ユーザーを向いた(ユーザーのための)製品であるかどうか」を見るということです。
デザインには狭義と広義の意味があると思います。前者は単なる色やカタチ、つまり見た目だけの話しです。既存の製品の色やカタチ、あるいは素材使いを少し変えただけ、というのがこれに当たりますが、モノが溢れた世の中の目の肥えたユーザーには、それはあまり意味がありません。そんなキレイなだけ・ユニークなだけの売れない製品は山ほどあります。これから語られるべきは、広義の意味でのデザインです。この場合のデザインとは「何らかの課題・目的に対して、何らかの解決・対処方法を提示する」ことだと考えています。例えば伝統工芸品の技法や素材を何かに転用できないか、こんなユーザーに向けた新しい製品をつくりたいのだが、などと言った場合にその企画・コンセプトから、設計、製造、流通
、販促に至るまで行うのが、トータルな意味でのデザインであり、今後のものづくりにはそれは欠かせないと思います。そして、それができるのがこれからの本当の意味でのデザイナーだと私は考えています。色やカタチだけを考えるのがデザイナーではありません。是非、皆さまにはそんな本当の意味でのデザイナーを見つけていただければと思います。
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