京都に根ざした優れたデザインを発掘

かたち無きものの
伝承と創造

株式会社 山田松香木店

 〒602-8014
 京都市上京区室町通下立売上ル勘解由小路町
 TEL:075・441・4694(代)
 FAX:075・431・7879

欧米の、精神を高揚させるパフュームに比して、日本の香りは精神を沈静させるインセンス(火を使って燻らす香り)である。体を香らせるものと、空間を香らせるもの、欧米と日本では香りの文化も対照的である。刹那的ではかなさを好む日本人の美意識が、他のアジア諸国とも異なる独特の世界を築き上げた。江戸寛政年間に創業、現当主で7代目という山田松香木店は、こんな繊細な香りの文化を伝え、守る老舗のひとつである。だからといって頑に伝統にこだわっているわけではない。香りは目に見えず、その時々によって感じ方が違う。だからこそ既存の調合法にこだわらず、現代的な感覚を取り入れ、新しい香りを求めていく。香道の教室や練香の体験教室などを通して、香りを楽しむ場や習慣を提案していく。そこから新しい伝統が生まれていくのだ。ただし、代々伝わる手本木を守ること。香りのグレードを落とさないこと。これらは老舗の誇りをかけて守っていくべきものである。いま香木は品質のよいものはほとんど出てこないという。しかし何百年か待てばまた良品が採れるようになる、とそれほど危機感はない。何百年か待てばよい、とはさすが何百年も続く店でなければ考えられない、また自信がなくては語れない壮大なロマンである。

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写真1  火取り香炉
写真2  伽羅木 銘「臥龍」
写真3 ブループラネット(パヒューム ド インセンス)